TÜV RHEINLAND JAPAN  |  EUサイバーレジリエンス法(CRA)対応支援

CRA成熟度簡易チェックツール

本ツールは、ENISA(欧州連合サイバーセキュリティ機関)が2026年7月に公表した「SME Cyber Resilience Maturity Assessment Model」を出典として、テュフ ラインランド ジャパンが日本語に翻訳・再構成した簡易チェックツールです。25問に回答すると、5つのドメイン別スコアと成熟度レベル、優先して取り組むべき改善アクションを確認できます。
25評価設問
5評価ドメイン
約30分所要時間の目安

このモデルについて

出典(引用元): ENISA — SME Cyber Resilience Maturity Assessment Model, July 2026(ISBN 978-92-9204-799-3 / DOI 10.2824/1676704 / CC BY 4.0)。本ツールは、この原文をもとにテュフ ラインランドが日本語に翻訳・整理し、チェックシート形式に再構成した資料です。

EUサイバーレジリエンス法(CRA)は、EU市場に投入される「デジタル要素を持つ製品」に新たなサイバーセキュリティ要求事項を課す規則です。2027年12月に本格適用が始まると、製造者・輸入者・流通事業者には、製品ライフサイクル全体を通じたサイバーセキュリティ要求事項への対応が求められます。ソフトウェアとハードウェアを最初からセキュアに設計し、脆弱性をきちんと管理し、必要なセキュリティアップデートを継続的に提供できるようにすることを要求されています。

本モデルは、自社のサイバーレジリエンスを体系的に評価し、強化していけるようENISAが開発したものです。多くの企業には専任のセキュリティチームがなく、担当者が複数の役割を兼ねている — そうした実情を踏まえ、理論書ではなく実務でそのまま使える、シンプルで実践的なつくりになっています。主な対象はデジタル要素を持つ製品の製造者・輸入者・流通事業者ですが、インテグレーターやサービスプロバイダーなど製品ライフサイクルに関わる組織はもちろん、規模を問わず、製品セキュリティを見直す枠組みとして幅広くお使いいただけます。

ご注意: 本モデルはCRAの主要要求事項と整合していますが、成熟度が「高度」に達していても、それ自体が法的義務の代替やCRA適合の証明にはなりません。製品セキュリティとサイバーレジリエンスを、段階的に、無理のない形で強化していくための道具としてご活用ください。

モデルの構成 — 5つのドメイン

本モデルは、CRAのサイバーセキュリティ要求事項がカバーする主要領域を5つのドメインに整理しています。各ドメインには5つの評価基準があり、それぞれをレベル1〜5で採点します。個別の技術的対策だけに注目するのではなく、製品ライフサイクル全体を通じた包括的なアプローチを支える構成です。

DOMAIN 1
ガバナンスと文書化
サイバーセキュリティの責任の割り当て、意思決定の記録、組織・製品レベルでのセキュリティ関連情報の管理。役割が明確で、記録が残り、文書が最新であることが土台になります。CRAは製造者に対し、必須サイバーセキュリティ要求事項への適合を示す技術文書の作成を求めています。
DOMAIN 2
リスク管理とセキュリティ・バイ・デザイン/デフォルト
設計・開発の段階で製品セキュリティリスクをどう考慮し、対処するか。セキュリティを後回しにせず、機能設計・コンポーネント選定・構成の判断に当初からリスクの観点を組み込みます。小規模組織に複雑なプロセスは不要で、市場投入前にリスクへのエクスプロイトを減らす判断ができていることが重要です。
DOMAIN 3
脆弱性・パッチ管理
製品ライフサイクルを通じた脆弱性の特定・管理・対処。既知の課題の追跡、ベンダーアドバイザリや公開脆弱性データベースの確認、研究者・顧客からの報告への対応を含みます。CRAはSBOMの作成を含む脆弱性・コンポーネントの特定と文書化、迅速で透明性のあるアップデート提供を求めています。
DOMAIN 4
製品ライフサイクル
CRAの販売後の対応。セキュリティは市場に投入した時点で終わりではなく、宣言したサポート期間中の脆弱性対応・報告、セキュリティアップデートやサポート終了時期に関する顧客への透明な情報提供が継続的な責任となります。サポート期間・責任・寿命終了後の移行を事前に定めておくことで、一貫した迅速な対応が可能になります。
DOMAIN 5
意識・力量・スキル
サイバーセキュリティの実践を支える「人」と組織能力。多くの会社の社員が複数の役割を兼務し、専任チームがないことも多いため、専門職を新設するのではなく、各自が自分の責任を安全・確実に果たせるだけの意識とスキルを備えることが目標です。一般的なセキュリティ意識と役割別のスキル、社内外での情報共有をカバーします。

成熟度レベル(1〜5)と3つの段階

各設問はレベル1(未実施・場当たり的)からレベル5(統制され継続的に改善)までの5段階で採点します。文書化されているかどうかだけでなく、実際にどう運用されているかに基づく、証跡ベースの判断が原則です。

LEVEL 1
初期
未実施。定義されたプロセスがない、または活動が行われていない
LEVEL 2
基本
非公式・場当たり的。活動は不定期で、担当者個人に依存している
LEVEL 3
進行中
文書化されているが、全製品・全チームで一貫して適用されていない
LEVEL 4
管理
一貫して適用され、定期的にレビューされ、エビデンスがある
LEVEL 5
最適化
測定・監視され、結果に基づいて継続的に改善されている
レベル4と5の違い: レベル4は「一貫して適用されている」状態を指します。レベル5にはそれに加えて、測定の証跡(指標・KPIなど)と、その結果に基づく能動的な改善が求められます。判断に迷う例 — 文書はあるが日常業務で守られていないプロセスはレベル3ではなくレベル2、製品やチームによって適用がまちまちならレベル4ではなくレベル3、レビューや改善の明確な証跡がなければレベル5ではなくレベル4を選んでください。

25問すべての回答から、ドメイン別スコアと全体スコア(1.0〜5.0)を算出し、組織の成熟度レベルを次の3つに分類します。

1.0 – 2.52.6 – 3.94.0 – 5.0
  • 低(1.0–2.5): 取り組みは非公式・場当たり的で、多くが事後対応。早急な対応が必要な段階。CRAとの関係では、要求事項を認識し、対応の第一歩を踏み出した状態です。
  • 中(2.6–3.9): 一部のプロセスは文書化されているものの、運用に一貫性がない段階。CRAへの整合は進みつつあるが、まだ一貫して適用されていない状態です。
  • 高(4.0–5.0): プロセスが公式化・定着し、能動的に管理され、継続的に改善されている段階。体系的で一貫性のある、測定可能なプロセスに支えられています。
回答の進捗0 / 25
各設問について、現状に最も近い選択肢を選んでください。採点は推測や印象ではなく、文書化された手順・実際の運用・記録などの客観的な証跡に基づいて行うのが原則です。複数のプラクティスをまとめて問う設問では、一貫してできている最も低いレベルを選ぶか、控えめに平均して判断してください。
まだ回答がありません。
「セルフチェック」タブで回答を進めると、ここに結果が表示されます。

CRA条文とのマッピング

以下は、本モデルの5つの評価ドメインが、CRA(規則(EU) 2024/2847)のどの条文・義務に対応するかを整理した参考マッピングです。

ドメイン主なCRA条文関連する義務の内容
ガバナンスと文書化 第13条(製造者の義務)
第31条・附属書VII(技術文書)
第32条(適合性評価手続)
必須要求事項への適合を示す技術文書の作成・維持、適合性評価の実施、市場投入後10年間(またはサポート期間)の文書保存。ガバナンス自体は独立した要求事項ではなく、これらの義務の履行を支える組織能力。
リスク管理とセキュリティ・バイ・デザイン/デフォルト 第13条(2)〜(4)(リスク評価)
附属書I 第I部(必須要求事項)
サイバーセキュリティリスク評価の実施・文書化・更新と、その結果の設計・開発・生産への反映。リスクに応じたセキュアな設計、セキュアな初期設定、アクセス制御・データ保護などの実装。
脆弱性・パッチ管理 第13条
第14条(報告義務)
附属書I 第II部(脆弱性処理)
SBOMの作成を含む脆弱性の特定・文書化、遅滞ない修正・セキュリティアップデートの無償提供、協調的脆弱性開示ポリシーの整備。悪用された脆弱性・重大インシデントのENISA・CSIRTへの報告(24時間以内の早期警告など)。
製品ライフサイクル 第13条(8)(サポート期間)
附属書I 第II部
附属書II(ユーザー向け情報)
サポート期間の設定(原則、想定使用期間を反映し最低5年)とその間のセキュリティアップデート提供。サポート期間・アップデート入手方法・サポート終了時期などのユーザーへの明確な情報提供。
意識・力量・スキル (直接対応する条文なし) CRAに独立した要求事項としては規定されていないが、第13条の義務履行と附属書I要求事項の実装・維持を支える組織能力に当たる。

改善チェックリスト — セルフチェックの後にやること

セルフチェックでスコアと成熟度プロファイルを確認したら、自分のプロファイルに対応するチェックリストを使って、次に取り組むアクションのロードマップを作りましょう。すべてを一度にやり切る必要はありません。重要な項目から始めて、一歩ずつ積み上げていけば十分です。各アクションは、組織の規模・リソース・製品の複雑さに応じて、無理のない範囲で取り入れてください。

進め方

    規模に応じた適用(プロポーショナリティ)

    本チェックリストのアクションは、組織の規模、製品の種類、関連するリスクに見合った形で適用してください。マイクロ企業(小規模企業)の場合、製品セキュリティを一貫性・追跡可能性・適時性をもって管理できるのであれば、より簡易なアプローチで十分なことがあります。例えば — セキュリティ課題の追跡・優先順位付け・フォローアップができる軽量なツールやプロセスを使う、最も重要なリスクとコンポーネントに集中する、社内リソースが限られる場合は外部の専門知識を活用する、といった方法です。目的はリスクレベルに見合わない複雑な仕組みを作ることではなく、適切なレベルのセキュリティと管理を実現することです。

    すべての成熟度レベルに共通する継続的改善

    現在の成熟度レベルにかかわらず、次の4点を習慣にしてください。